今回は「業務フロー」についてのお話です。
株式公開準備作業実務で一番大変なのは多くの人が絡む作業でしょう。その代表といえば「業務フロー」です。業務フローとはその名の通り「業務の流れ」で、経理帳票・備品管理や人事管理まで社員全員が係わるものです。
ただ「業務フローが大変」と言っても"作成"ではなく"定着"です。
以前、勤めていた株式公開準備会社で、私はこの「業務フロー」に四苦八苦した。そこは、月次など3.4月後でないと出て来ませんしその精度にも疑問があったり、給料計算など300人以上となり間違え続出状態でした。半年程掛かりましたが、何とか翌月の10日までに精度ある月次が完成し、経営会議が出来るようにするなど、様々な業務フローの改善・定着を行ないました。しかし、そこは公開には至らず私は別の会社に移りました。
人の紹介でしたが私は内心「あの苦労をまた一からやるのは大変だなー」と思っていましたが、その会社はソフト会社であり独自の管理システムが存在し、以前の会社と比べ物にならないくらいでした。私は「これなら、幾つかの箇所を直せば、あっという間に体制が整えられる」とホットしました。しかしこれは間違えでした。
そこの一番の問題は、売上高の管理を現金が入った時点で認識する基準(会計用語で"現金主義")を採用し、これは株式公開における会計では致命傷なので何としても修正する必要がありました。しかし、この管理システムは給料の歩合制にも絡み社員全員にこの基準が浸透し、かつこのシステムは社長自ら作成したもので、いくら説明しても修正を頑として譲りません。やむを得ず、証券取引法による決算と会社内部の管理用の決算を行ないました。
社長や幹部が監査法人や証券会社と話すと、内部管理用の数値で話すので、私は「証取法ではこの数字です」とその度に訂正したが、限界があります。この食違いは後々、証券会社に大きな誤解を招き大問題となってしまいました。(いつかはこの様な事態になると感じていたので、社長に言ってもダメなので、証券会社に「社長の話す数字は"内部管理で使う数字"なので御注意を!」と何度も言ったが結局、起きてしまった。)
私は当初「一から作るのが一番大変」だと思っていましたが、この経験から「現存し浸透しているものを修正する方が何倍も大変」と実感しました。
例えるならマンションの建替えで、建替えるには住人の承認が必要です。しかし個々に抱える問題・考え方は様々でまとめるのは大変です。更地から建てるのならこの様な苦労はありあません。
多くの人が係われば係わる程、既存方法の改善・定着は大変になります。よく小泉さんを「ぶっ壊し屋、壊しただけで・・・」と揶揄する人もいるが、「でもね、壊すのも大変だよ」と思ってしまう。
そうですね!
私も、正直言うと、「この現行就業規則を見直してください」と依頼されるよりも、一から作り上げる方が楽だったりします…。
今まで積み上げたものを捨て、新しいものを取り入れるって難しいですよね。